2. 軍用銃は猟銃として使うことができるか。猟法はどうなるのか。
もちろん自動小銃も猟銃も鉛のタマを前に向かって飛ばすのは一緒なんだから使うことができるに決まってはいるんですが、一応考察です。
私は元々銃器が好きで、電動ガンを使ってサバゲーなんかもやっていたクチですので、自衛隊の装備にも興味があって、もちろん実物を撃ったことは無いんですが、正式小銃の89式や64式も電動ガンや展示品を触ったり見たりしたことはあります。
89式や64式を猟銃と比してもっとも特徴的で、軍用銃らしい部分は2脚架でしょう。海外でもフランスのFA-MASやスイスのSIG550にあります。
我々が狩猟や有害捕獲で入る山は非常に勾配がきつく足場も悪いことが多く、たとえ銃についていたとしても、とても2脚なんて立てることはないでしょう。89式の2脚は冷戦中に想定されていた北海道での戦闘を念頭に置いたものであるか、あるいは陣地内で防御戦闘をするときに有効な装備なのでしょう。
狩猟と戦闘の最大の違いは、狩猟の獲物は基本的に逃げて行くものですが、戦闘における敵はこちらに向かって攻めてくる、ということです。お互い攻撃の意志があるから戦闘になるので「防御戦」という戦い方もあるのですが、狩猟において防御という自体はあまり発生しません。手負いのイノシシやクマが反撃してくることはありますが、これも至近距離での遭遇戦のような状況であって、数百メートルを隔てての撃ち合いという状況にはならんわけです。
狩猟の獲物はほとんど逃げの一手ですので、犬を使って追い出して、逃走経路にハンターが待ち構えたり、多数の人間が勢子になって包囲して追い詰めたりするわけです。
単独猟なら流し撃ち、車等で猟場を移動しながら獲物を見つけたら長距離から狙撃するやり方もあります。また、かなり専門的な方法ですが、忍びとか単独潜行とか言われる、獲物の行動を読んで追跡、回り込み、待ち伏せを組み合わせて獲物と遭遇をする方法もあります。
自衛隊が有害捕獲を実施するなら、隊員の数にモノを言わせて、人間が勢子をする追い込み猟をやることになるでしょう。それでも、隊員が横一列に広がって手をつないで山を横断するわけには行かないから、獲物は包囲を抜けようとするはずです。
追い込みをする複数の勢子が獲物に向けて発砲をすれば、かなり危険な同士撃ちになる可能性がありますので、勢子は空砲で脅すだけになるか、危険を承知で実弾射撃するかは分かりませんが、これまた嫌な役目になることは間違いありません。ただ、発砲の可否に関する判断力は必要だから、良い訓練にはなるでしょうね。