1995年3月、当時の警察庁長官であった國松考次氏が自宅マンション前で銃撃され重傷を負う事件が発生いたしました。
この事件の凶器となった拳銃弾は「
ナイクラッド ホローポイント」という種類で、競技用ショットシェルでもおなじみのフェデラルから発売されています。弾が特定された直後は、犯人の逮捕も近いだろうと報道されていましたが、結局この3月に公訴時効となりました。
さて、通常の拳銃弾は鉛の芯を銅系の合金で被覆するか、スラッグ弾みたいな鉛のムクであります。しかし、このナイクラッドという弾は鉛をナイロン樹脂で被覆してあるのです。
ナイロン樹脂で被覆する理由はいくつかあります。まず、コスト。通常、射撃訓練には安価な鉛むき出しの「レッド ラウンドノーズ」が使用されます。これは通常のスラッグ弾と一緒ですね。ところが、特に警察などの法執行機関が屋内の射撃場で訓練を行うと、銃身との摩擦や熱で微粉末となった鉛が飛散し、訓練生や教官の健康被害が心配になります。(実際に何らかの被害があったかどうかは把握しておりません。しかし、兵庫県警を昨年退職した知人によると、射撃訓練の際はゴーグル、イヤマフに加え、防塵マスクを装着していたそうです。もっとも、これは弾頭の鉛に加え、特に雷管から発生する燃焼ガスを避ける意味もあるのでしょうが…。数十年前までの雷管は水銀の化合物を使用していたし、現代でも鉛の化合物が使用されているのです)。(ということは、屋外とはいえ鉛むき出しの散弾やスラッグを撃ちまくる我々はどうなるのでしょう!?)。
閑話休題。とにかくナイクラッドは鉛をナイロン樹脂で包むことで、金属被覆よりも安価に鉛の飛散を抑えようとしているのです。ナイロン被覆は同時に、銃身への鉛の付着や摩耗を抑え、抜弾抵抗を小さくし、発射の反動を抑える効果もあるそうです。
次に対人実射に際して、一部の法執行機関ではエネルギー転移性の高い、ホローポイント弾を使用します。これは、金属被覆弾の先端に穴を穿ち、場合によっては樹脂などで先端をカバーし、人体に着弾した瞬間に弾が変形し、運動エネルギーを効率的に人体の破壊に転換することを目的としております。
ナイロン樹脂による鉛の被覆は、銅系合金による被覆よりも剛性が低いため、ホローポイントと相性が良いといえます。
つまり、ナイクラッドは訓練においても実戦においても使いやすい弾なのです。
ところで、ナイクラッドは.38口径と.410口径が用意されております。説明を読む限り、12番のスラッグとも相性が良さそうなんですが…。発売されないかなぁ。