兵庫県で保護対象となっているツキノワグマでありますが、毎年イノシシを対象とした箱わなによって錯誤捕獲される事故が発生しております。
クマの錯誤捕獲を防ぎ、安全で効率の良いイノシシの捕獲を実施するため、箱わなの管理を徹底しましょう。また、誤って箱わなに入ったクマが脱出できるよう、箱わなに脱出孔を設けましょう。
識者への取材から、箱わな運用上の注意点をまとめました。季節はずれではありますが、とりあえず掲載します。
錯誤捕獲を防ぐための運用上の注意について。
・残念ながら、イノシシは食べるがクマは食べないという餌はありません。クマは嗅覚も利くし何でも食べるし、わなに対して大胆という、ある意味で厄介な性質の動物です。
・イノシシは罠に入る前に、周囲に足跡、食み跡を付ける等の前触れがあるが、クマは何の前触れもなく突然罠に入る場合があります。わなを稼働させずに餌付をして、十分にイノシシを集め、その痕跡を確認した上でわなを稼働させれば、クマが錯誤捕獲される可能性を下げることができます。
・当然のことではありますが、クマの痕跡が多い場所には罠をかけない方が好ましいといえます。また、イノシシの痕跡が多い場所で、イノシシを誘引した上で捕獲を実施し、毎日巡回するという基本を守るべきです。
・わな周辺にクマの痕跡が見られるようになってきたら、扉を落としてしまって一旦餌付を中止する、あるいは罠を移動することで、クマを罠に執着させないようにしましょう。
脱出孔の開け方について。
・箱わなの天井部に、誤って閉じ込められてしまったツキノワグマが自ら脱出できるような孔を設けましょう。
・脱出孔は30センチ四方が目安です。箱わなのメッシュの一部を金ノコ等任意の工具で除去することで簡単に作成できます。
・クマは頭が抜けられれば全身脱出できます。あまり大きな穴を開けても箱わなの機構を損なってしまいます。メッシュの間隔にもよりますが、15センチ角のメッシュであれば縦横1区画を切り抜き、30センチ角の四角いスペースを開ければOKです。
・孔はなるべく天井の中央に設けることで、強度の低下を最小限に抑えられます。天井の端に孔を設けると、イノシシもそこを目指してよじ登ったり、壁に体当たりした時に壊される可能性が高くなります。
・孔をあけた際に、扉落としの機構部やワイヤーの取り回しに影響が出ないか確認しましょう。罠の機構を理解した上で作業をすれば、そんなおかしな所に孔を開ける事はないと思いますが…。
・クマが餌付いた状態でわなを稼働させると、例え脱出孔が機能したとしても、クマが餌を食べて扉を落とし、脱出孔から抜け出すことを繰り返す、単なる餌場として利用される場合があります。
・わな運用の基本を守って注意深く運用しても、錯誤捕獲の可能性をゼロにすることは困難です。とはいえ、錯誤捕獲の可能性を極力下げるように注意しましょう。
参考として…
・一部の地域では、20~30メートルのロープを使い、遠隔操作で箱わなの扉を開ける仕組みを作っています。クマが錯誤捕獲された場合、車の中からこれを操作し放獣するのですが、危険を伴う操作であり専門家としてはお勧めする事はできません。あくまで参考として紹介します。