幸運にも、有害捕獲や狩猟でシカを射獲する機会に十数回恵まれ、また、他人の射獲したシカも触らせていただくうちに、バックショットと言われる大型哺乳類用の散弾の有効性に疑問を持つようになっておりました。通常、バックショットは1発で9粒ないし6粒の鉛弾を撃ち出し、獲物がシカであれば、弾のうち半分…6粒弾のうち3発、9粒弾のうち5発が当たれば、確率的にそのうち1粒以上が有効打となって頭部、頸部、胸部、脊椎等を損傷し、その場で倒れ、回収できると言われています。
獲物が多少遠くても撃ちたい、なおかつ、半矢を作りたくないという自分の性格上、28インチという大物用としては長めの銃身に半絞りのチョークを付け、威力限界であるところの40メートル先でも直径80センチくらいに散開するように、先輩方からは「絞りすぎ」と言われるくらいのセッティングにしておりました。日本では法律上、バックショットのパターンチェックは出来ないので、猟野で発砲した際の弾痕を探して検証するしかないのですが、このセッティングで35メートル先のシカを撃った時は、9粒中7粒が胴体に命中し、即倒させる事ができました。ただ、狙いが遅れて下半身に命中していたので、即死には至りませんでしたが、これが上半身であればきれいな即死であったはずです。
ところが、ここまでチョークを絞っていると、獲物を引きつけすぎた時が問題で、10メートル弱まで引き付けて発砲した機会には、弾は拳大の範囲に着弾し、これまた狙いが悪く肩甲骨を割っただけで致命傷に至りませんでした。これが、頭から頸に命中していればこれまた即倒だったはずなのですが、このときは回収までかなりの距離を走らせてしまいました。
では、私の周囲の先輩方はどのくらいの銃身の設定になっているか、と言うと、26インチのシリンダー銃身の方が多いようで、おおむね30メートル先で直径1メートル程度に散開するようなイメージで射撃していらっしゃるようです。でも、この設定だと40メートル先になったら上半身を中心に命中しても倒れるかどうか、半々の運次第になってしまうような気がするんですよね。
もちろん、そのセッティングで私よりはるかにたくさん獲物をとられる方もいらっしゃるので、結局はウデ次第なんでしょうが、私はやっぱり自分が納得できるセッティングで銃を使いたいのです。