ハンターをやっていると、獲物の観察や猟犬との付き合いなど、動物とふれあう機会がふえるもので、動物の不思議な行動を目にすることも多い物です。今日は、人間と動物の意思疎通の話です。
我々が主にやっている、猟犬を使役した巻き狩りでは、勢子という役割の人がいて、猟野で犬をあやつり、獲物を見つけさせてマチにそれを追い出します。 勢子は犬をけしかけるとき「ホーイ」とか「フー、ハッ!」という掛け声、勢子声を出します。「獲物がいるはずだぞー、探せー」「よそ見するな、前に走れ」「もっと吠えろ」いろいろな状況がありますが、勢子声はだいたい同じ発音です。犬を励ます、ポジティブな命令はすべて「ハッ!」で事足ります。逆に、帰ってくるように促すのは「コ、コ、コ」です。単純な発声で、犬の群れを思いのままに操ります。
あとこれはハンターとは関係ないんですが、私が飼育している猫をケージに入れて車に載せて外出した時、結局1日仕事になってしまって退屈した猫がむずかったことがあります。夜の9時を回ったころ、それまでおとなしくしていたのに、ケージから出たいのかニャーニャーと鳴き出しました。
「あと30分で家につくから」
と、人間相手にしゃべるように話しかけると、面白いもので猫は静かになりました。しかし、予想以上に道が混んでいて、35分ほど経ってもまだ家まで距離があります。すると、猫がまたニャーニャー鳴き出すんですね。人間の言葉どころか30分という時間感覚まで判っているんでしょうか。
人間の言葉がわかるのは飼育動物ばかりでは無いようです。
ある時、交通事故で腰を折った仔イノシシを近隣住民が保護し、引き取りを依頼されたことがあります。豆芝くらい、体長30センチほどの仔ジシは確かに可愛い。ケージに入れて車の助手席に乗せ、連れ帰ります。隣でブヒブヒいってると、ペットのミニブタみたいです。
途中で車を止め、別の保護員と対応を電話で相談。電話口で
「可愛そうやけど有害捕獲してるし、殺さなしゃーないね」
言ったとたんに仔ジシが
「ブギャー」
という大音声。他の担当者とも同様の電話をして、
「殺さな…」
と言ったとたんにまた
「ブギャー!」
これは夢見が悪い。
言葉がわかるというか、不穏な殺気を感じるんでしょうかね。