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2010/10/10

ボウ・ハンティングから見えるもの

Tweet ThisSend to Facebook | by kanri

米17歳の少女、弓矢で200キロ超のクマを仕留める

2010.9.30 06:32
このニュースのトピックス:米州
ジェシカ・オルムステッドさんと射止めたクマ=8月、カナダ・オーバ(AP)ジェシカ・オルムステッドさんと射止めたクマ=8月、カナダ・オーバ(AP)

 米ミシガン州の高校生、ジェシカ・オルムステッドさん(17)が先月、家族と訪れたカナダのオンタリオ州オーバで狩りを行い、体重448ポンド(約203キロ)のクマを仕留めていたことが分かった。28日、AP通信が伝えた。

 オルムステッドさんは16ヤード(約14.6メートル)の距離から複合弓を引き、見事に矢を命中させたという。30年以上、狩りを教えている父親のティムさんは「優秀な生徒です」と笑った。
 
MSN産経ニュースより。
 
 
 この記事をずぶの素人さんと見ていて、ボウハンティングについて解説をさせてもらいました。
 
 火薬の化学エネルギーをタマの運動エネルギーに転換する銃ではなく、人間の力だけで撃ち出す弓矢で獲物を殺すボウハンティングは、偏芯滑車で軽くつがえることができ、命中精度の高いコンパウンドボウが実用化された1970年代後半から、米国の狩猟界で息の長い流行であります。
 殺傷力を高めるため、鏃はばねの力でカッターナイフのような鋭い刃が花弁のように開く仕掛けになっています。射程距離は実質15メートル程度。急所に命中しても、大型の獲物であれば惰力でハンターを押しつぶしてしまう可能性があるので、木の上等の安全な足場から狙うか、大口径のライフルを持ったガイドが止めを撃ち、獲物を解体して矢の刺さった場所を確認し、スコアとなるかどうかを判断します。
 
 欧米のスポーツフィッシングでも、釣れた数を競うのではなく、より細い糸や原始的な道具で魚をとらえることをよしとする場合があるようで、ボウハンティングもそれと同じ感覚なのでしょう。
 
 しかし、ハンティングに縁遠い人にすれば、肉を食べたり、毛皮を着たりするわけでもないクマを、わざわざ危ない道具で殺すことは理解に苦しむ行為だったようで、つい私も自嘲的になって
 「まぁー現代のハンターなんてみんな生き物を殺して遊んでるんだよね」
と、普段の主張とは正反対の発言をしてしまいました。
 
 ハンティングにはいろいろな要素があります。
 
 自分が食べる、生活のために使う、動物の身体の一部。肉や皮や角を手に入れること。獲物であるシカやイノシシやカモの生態をよ深く知る。優秀な猟犬を育てる。猟友と協力して、皆で結果を出す。銃やナイフなど、危険な道具を使いこなす。その結果として、巨大なシカの角や恐ろしいクマの頭部を剥製にして壁に飾ったりするわけです。
 
 私が有害捕獲、シカの巻き狩りの見学を始めた頃、猟友が斃したシカを回収するために、藪の中にこぎ入ったことがあります。
 5月の末、半分梅雨に入ったような午前の終わりに、蒸し暑く乾かない汗が肌をぬらし、頭に血が上るような深い緑の茂みを掻き分け、ようやくシカの体が見えたときに、不意に山椒の香りが強くたちこめました。湿気の露の一粒一粒が、山椒の香りを含み、空気の中に一枚の層になっていました。獲物を必死に探すあまり、とげだらけの山椒の枝をつかんでいたのです。
 
 本当は獲物を撃つ事なんてどうでも良い。きっと世界で一番鮮やかな山椒の香りを知っている。それもまた狩猟のために山に入る値打ちなんですが、これを人にわかってもらうのは実に難儀なことであります。

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