シカの増加による食害、踏み荒らしの害は、日本中の山村どころか、姫路のような山に近い都市でも大問題になっております。知らないのは平野部の都市に住んでいる人ばかり、なのですが人口の大多数はそういう場所に住んでいるので、国民的な話題にはなかなかならないんですね。
さて、シカの増加の原因の一つは天敵の不在だという説もありまして、たしかに日本オオカミは少なくとも前世紀中には絶滅、野犬を見かけることもすっかり少なくなりましたね。
現在、シカの生息地ではシカ増加により、主食の植物が足りない、すなわち、シカが餓えていて食物の量が繁殖のボトルネックになっている、と仮定します。
餓えた状態では、特に冬の餌が少ない時期には餓死するシカもいます。これは、1歳未満の(その冬が来る前の初夏に生まれた)、成長しきっておらず皮下脂肪の蓄積の少ないシカが死ぬ可能性が高い。1歳未満のシカが死ぬということは、2~3年以上の期間で考えれば、そのシカが産むはずだった数頭の小鹿も生まれなかった、ということになります。反面、年をとって妊娠能力が下がったおばあさんシカは、私が解体をした経験から言えば、十分な皮下脂肪を蓄えており冬に餓死する可能性は低い、といえます。
ところで、シカの天敵であるオオカミは、運動能力の低い小鹿をよく狩るのですが、それ以上によく太ったうえに骨粗鬆症を起こして骨折しやすいおばあさんシカを餌食にすると思われます。これは、結果的には人間が射殺したにせよ、犬が噛み留めや吼え留めをしていたケース。野生の状態であれば最終的には食い殺していたであろうケースを観察した結果の見解なのですが、老いたシカというのは身体が大きいわりに骨がもろくなっており、犬から逃げようと大ジャンプした時にでも傷めるのか、骨折することが多く、その割には十分な皮下脂肪を蓄えており、犬に追われなければ冬を越せただろうな、と思うような個体ばかりなのです。
一方、犬が小鹿を追い詰めた場合、その小鹿はもともと育ちが悪く、ほっといても死ぬだろうな、というような個体が多いのです。
つまり、オオカミに間引きをさせることで、育ちの悪い小鹿と妊娠能力(将来の産子数)の少ないおばあさんシカばかりが死に、その分の餌を妊娠能力の高い若い雌ジカが摂取することで、将来の繁殖まで考えたとき、全体の生息数が増えてしまうのではないか、ということです。
ちなみに、私の利用したモデル、野生シカの雄雌比1:1、寿命6年で雌は生涯に5頭の子供を産む、と仮定した非常に大雑把な計算では天敵による間引きがあったほうが群全体の繁殖力は高くなる、という計算に実際になってしまいました。
このような議論は行政、研究機関、NGO、猟友会の各有志を集めて、いろいろな意見を出し合わないと精度が上がらないんですが、そういう場も無いんですね、残念なことに。微力ですが私はこのブログで意見を発表させていただきます。