関連バナー広告

日誌
事務局日誌 >> 記事詳細

2010/07/30

兵庫県 新型シカ捕獲装置(ドロップネット)の問題点と利点

Tweet ThisSend to Facebook | by kanri
兵庫県森林動物研究センターのウェブサイトで、話題の新型シカ捕獲方式(以下ドロップネット。大量捕獲、捕獲柵などとも呼称される。)のマニュアルが公開されています。
 
これは、兵庫県の農林業に被害を与えているシカの頭数を捕獲により減らすため考案された装置で、
 
①高度な狩猟技術が不要:集落住民が中心になったシカ捕獲が可能
②簡単な構造で特殊な資材が不要:設置や修理が容易
③少人数で効率的な捕獲:少人数による1回の操作で複数頭を同時に捕獲可能
④比較的安価:市町で購入・設置が可能
⑤移設可能な構造:捕獲効率が低下すれば別の場所に移設可能
 (以上引用)
 
という特徴があります。さて、これまで猟友会頼みだったシカの駆除を、住民自ら実施できるドロップネットですが、シカの上にアミを落としただけでは、シカは生きております。誰かがこれを殺して回らねばなりません。また、アミを落とすスイッチを押すのは狩猟行為となり、駆除の有資格者≒猟友会員の仕事、ということに現実問題なってくるのです。
 
さて、猟友会員の視点から、ドロップネットの問題点を指摘させていただきます。
 1. 集落民中心というが、結局「処分」は不慣れな者では難しく、猟友会の仕事となるのではないか。アミが絡まったシカを撲殺するのは通常の狩猟行為よりも残酷に見える上に、危険な作業なのではないか。
2. この装置において、捕獲の実施時点、つまり狩猟法でいうところの「獲物を自己の支配下におさめた時点」はいつであるのか、装置にシカが入った時点か、アミを落とした時点か、撲殺した時点か不明確であり、何処から何処までが猟友会員の仕事になるのか判然としない。
3. 安価というものの、本体の価格だけでなく開発費等も含めると費用対効果はどうなのか。1基10万円程度の通常の箱わなで年間30頭のシカ、イノシシを捕獲する猟友会員もいる。
4. 銃を用いた方法でも、既存のわなでも、ハンターは1頭の獲物に狙いを定めて捕獲を実施する。銃を用いた場合、可射範囲に入った獲物があまりに幼かった時など、射獲をためらうハンターは多い。また、くくりわなの場合も、足跡や獣道を見極め、オス、メスの別、大きさまで判断して、ある1頭に狙いを定めてわなを仕掛ける。ただなんとなくぼんやりと「このあたりの群れの中の1頭」と思って仕掛けたのでは、なかなか捕獲できない。一方、ドロップネットはある範囲にいるシカを、雌雄大小の別無く根こそぎ捕獲してしまうことになり、捕獲実施者が捕獲対象を明確に定めることができない。
 
とくに4.の点は、ハンターにとっては大きな問題であり「どれを捕まえるか決められずに、居るものはすべて捕獲する」というのは、自然から恵みをいただく謙虚な狩猟者の態度とは正反対であります。自然の恵みも謙虚もない、とにかく捕獲! というのはいかがなものでしょうか。
 
 
 一方でもちろんドロップネットの利点、というのもあります。
 
 まず、住民自ら設置場所の選定や設置作業に参加するだけでも、これまで有害鳥獣捕獲に従事している猟友会員の苦労が分かり、理解が深まるであろうということです。
 
 徐々にドロップネットの設置が始まっております。捕獲効率など、今後の動向を見守りたいと思います。

23:00 | 投票する | 投票数(1) | コメント(0)