12月20日、1月16日~19日に続き、2月4~6日に今期3回目の豊岡市ナントカ谷に入猟しておりました。
12月はまだ山も秋の趣を残しておりましたが、1月と2月は雪に覆われた中で、獲物をはっきり目視しながら射撃をする機会が何度もありました。
積雪と落葉で見通しが良い場所であれば、300メートルくらい離れた獲物も確認できるため、ライフルがあれば圧倒的に有利な状況であります。
私もサボットスラッグを使うため、M870にハスティングのパラドックスを搭載し、スコープをマウントした狙撃仕様で出猟しました。
最初の猟は、私が見通しのよい谷で待ちに入り、2人の猟友が左手の尾根筋から獲物を追い出します。
ここで待ち場の選択が難しいのが、獲物が山から下りてくるだろう場所の目の前で待つ一発勝負にするか、それともそこから少し引いた見通しの良い位置で、シカの通り道全体を目視するようにして、撃ちやすい状況を待って狙撃するか、という事です。
一発勝負で獲物が予想通りの動きをしてくれたなら、山から姿を現したところで50メートル、上手くいけば30メートル程度の距離で撃つ事が出来ます。反面、獲物に先に自分の姿を見られてしまったら、大きく山を迂回されて撃つ機会は無くなりますし、そうでなくとも予想よりも山寄りのコースをたどられただけでもスカを食らってしまいます。
反面、見通しのよい場所で待つ場合、射距離は長くなりますが、メインの通り道と、より山側のそれを共に視界におさめる事が出来、さらにうまくいけば、メインの通り道から自分の方に獲物が近づいてくる経路もあり得ます。
なかなか来られない山で、少なくとも獲物の姿だけでも見たいという気持ちと、せっかく調整したサボットスラッグと4倍スコープの性能を活用したくて…要は遠いところのモノ撃って良い格好をしたくて、見通しのよい待ちを選びました。
雪が積もっているとはいえ、天気は良く、勢子役で獲物を追い出す猟友が山を巻くのをのんびりと待ちます。その間、雪を掘ったり盛ったりして射座をこしらえ、スコープを覗いて射線を確かめ、あとはボーっと待ちの一手。
風が無いとジーとしてても快適ですね。上昇気流に乗るトンビなんかを見ながら、待つ事小一時間。予想していた通り、左手の山陰から3頭のシカが降りて来ました。雪は膝上まであるはずで、走るわけでもなくヨッコヨッコと谷をわたります。
私のマチからは一番接近して130メートル。射程ギリで横切るコースです。何とか撃てるかな…とスコープを覗いて観察すると、可愛いメス3頭。心理的にちょっとためらわれます。うーん、どないしよ。「メスばっかりだから撃たなかった」と言って気を悪くするような連中でもないので見逃しても良いんですが、自分も坊主逃れしておきたい。と、よく見ると最後尾の1頭は細い1本角の雄。やたらずんぐりして、カモシカみたいな体型です。2頭の雌よりも大柄だし、これを狙おう、と谷を渡るのを待ちます。
一旦全身が見えた獲物も、最近点に至るまでは、積雪と手前のコブのせいで、頭が見えたり隠れたり、犬かき泳ぎのような塩梅で、ちょっと不安になります。このまま谷を下られると、影に入ったまま、とても撃てない距離まで姿が見えない…いやいや、当然通るはずのコースを通ってくれれば、今に頭全体が見えるはず。特に最後尾のやつは体も大きいんだから、頸から上くらいが…。
こういうの、思い出して書いているから恥ずかしいんですが、100メートルでゼロインしてたのに、130メートル先でやっと見えた獲物の頭そのものを狙って撃ってしまってたんですよね。そりゃー撃ち遅れもあるし、着弾も15~20センチは低落しているはずだから失中して当然です。
1発目は獲物の手前のコブをかすめて雪煙りを上げ、失中。シカも急いで逃げようとしても雪で走るに走れないのか、あまりペースを変えずに歩いています。また頭を狙ってもう一発。すぐにコブにかくれて見えなくなるので、当たって倒れたかなーとも思うのですが、望み薄です。よく考えれば今しがた、頭狙って外してるんだから、ちょっと修正して頭上の空間を撃てばいいのに、初心者はそれが出来んのですな。あとから見たら、シカの後ろでバックストップになっていた砂防ダムのキワの赤土を派手に砕いていました。
シカはまた谷に隠れ、次に見えるのは右手の山際を登るとき。ちょっと撃てない距離になってしまいます。もう、これはあきらめて、シカの居たところまで近寄って、念のために跡見。元気な足跡が3頭分ついていて、右手の山にちらりと白い尻が見えました。血も毛も落ちていない、きれいな失中です。
今の距離で命中していたら、サボットスラッグの値打ちがあるんだけどな…という状況で、残念ではありましたが、そんなに簡単モノでもないわけで。
今回の出猟中、なんとか1頭射獲したのですが、射距離は良いとこ20メートル。サボじゃなくても十分届いていたし、オーバーパワーで胸に大穴を開けてしまって、心臓、肝臓、横隔膜が原型をとどめていない状態でした。
まったく、イメージ通りの理想の捕獲をするというのは難しいものです。
ちなみに弾は
レミントンのカッパーソリッドで、高価なサボの割には運動エネルギーが小さい…弾頭重量は通常のスラッグと同じ1オンスで、初速も1450fps(ライフルドスラッグより遅い!)と、数値上はあんまええことないなぁと思っていたのですが、空力特性が良いのか、集弾が良好で弾道もフラットな、非常に扱いやすい弾でした。「胸に大穴」というのも、エネルギーの転移性が良く、効率よく獲物にダメージを与える事が出来ているんでしょうね。1発600円の値打ちはあります。
一口にサボットと言っても、高速度化・高エネルギーを志向したものと、運動エネルギーはそこそこで、弾道の安定を志向したものがあるようで…この話はまた別項で。