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2011/01/31

パラドックスガン

Tweet ThisSend to Facebook | by kanri
佐賀県における猪狩猟中の猟銃暴発事故を受けて、2chに「散弾銃って何のためにあるの」というスレッドが開設されました。
http://news.2chblog.jp/archives/51545853.html
まとめサイト、2chコピペ情報局
 
 
 私の見解は「ショットガンは近距離で移動する的を撃つもの」ということですから狩猟では鳥撃ちに最適。大物撃ちでは一般的にはライフルに分があるが、至近距離、藪越え、遭遇戦ならショットガンのほうが有利なケースもある、という風に考えております。
 
 さて、小説や映画でうすうす感づいてはいましたが、タマ1発で勝負するライフル…特にボルトアクションと比べ、自動や簡単な操作で大量の散弾をバラ撒くショットガンは「卑怯な武器」とされやすい。私に言わせりゃ数百メートル離れて、獲物に気づかれないようにゆっくり狙って攻撃できるライフルも、いい加減卑怯だと思うんですが、イメージというのは大切なもので、上記スレッドでも
「ショットガンはヘタでも当たる」
などと書かれています。
 
 じゃあーショットガンを使っても獲物に当たらない私はどうなるの、といったところですが、
「ライフルはストイックな熟練者のかっこいい道具、散弾銃は女子供の自衛用か、下手くそが仕方なく使う道具」
という心象が付いてしまっては情けない。なぜなら日本では狩猟初心者の猟銃は空気銃かショットガンに限定されており、ライフルの所持許可には銃歴10年が必須だからです。
 
 ライフルの規制の中、私のような狩猟初心者が、本来ライフルのほうが好適な状況でシカ撃ちなどをしようとする場合、ある意味やむを得ずショットガンを使うことになります。ショットガンでもなるべくライフルに近い特性を得るために、20番というやや狭い口径のスラッグ弾を使ったり、サボットスラッグを使用したり、いろいろ工夫するわけです。
 
 さて、今「サボットスラッグ」という名前を出しましたが、これはスラッグの弾頭をプラスチックのワクで囲って、本来の口径よりもやや径の小さい弾頭を射出するタイプの実包です。これは、ショットガンでありながらライフリングのついた銃身を使用するので、サボットスラッグ専用銃とか、サボットスラッグ用銃身が必要であります。
 
 ところで、日本では銃身の半分を超えるライフリングの有無で、ライフルか散弾銃かを区別されるので、本来全長にライフリングが刻まれているサボット専用銃身も、半分は平滑銃身になっています。そんな、折角のライフリングをわざわざ除去して輸入するなんて…と理不尽に感じていたのですが、先ごろ興味深い記事を発見いたしました。
 
 英国の高級猟銃メーカー、ホーランドアンドホーランド が19世紀の終わりに製造販売していた猟銃の中に「パラドックスガン」という一群がありまして、簡単に言えば銃口側の銃身、2~3インチにライフリングのあるショットガン兼ライフルなのです。散弾もスラッグ状の1コ弾も撃てたとのことで、インドやアフリカの狩猟において、大物にも小動物にも対応する…要するに五目撃ちですね。この当時の猟銃は黒色火薬全盛だったでしょうから、ショットガンとしてもライフルとしてもまずまず満足のいく性能が出せたのかもしれません。
 
 現代でも、ハスティングのハーフライフル銃身は「パラドックス」という愛称が付いています。上記のパラドックスガンにちなむものでしょう。
 
 どうしても中途半端のそしりを免れないハーフライフルショットガンですが、パラドックスと呼べば古き善き伝統狩猟の歴史を感じさせる…いやいや、やっぱり遠くの獲物はフルサイズのライフルで撃ちたい。さっさと規制緩和されへんかなぁ。。。

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